山本兼一作 「千両花嫁」 とびきり屋見立て帖

  • 2013.08.06 Tuesday
  • 22:00
 「千両花嫁」とびきり屋見立て帖

<解説>中江有里から引用

妻は名代の茶道具屋の娘ゆず。夫はゆずの実家店の奉公人である真之介。ゆずは茶道
家元の若宗匠との縁談を拒み、好き合った真之介と駆け落ちし、夫婦となりました。
本作は侍ではなく、真之介、ゆず夫婦の目から見た幕末の世界。そこに坂本龍馬、近藤勇、
芹沢鴨、高杉晋作、土方歳三たちが物語の思わぬところで顔を見せる、という虚実ない交ぜ
の内容が読みどころのひとつです。

ふつうの生活が実はなにより素晴らしい。そうしたふつうの生活には、これまでに蓄えた知恵
の下支えがあるようです。道具屋である彼らの知恵とは、もちろん「見立て」のこと。
「見立て」は、真之介とゆずの祝福されない愛にも力を与え、そこには奇跡ともいえるような事
が起きます。

無理は承知だけど、どうにか自分の願いをかなえたい。もしかしたらいつかどこかで自分も遭
遇するかもしれない場面。人生の岐路に立った時、はたして自分は何をどう見立て何に賭ける
のか?
こういう時、商人は感情に流されて賭けるのではなく、冷静に論理的に判断、選択をするのです。
それこそがよい「見立て」となる。 真之介、ゆず夫婦が営む道具屋は、そうした知恵の結晶とも
いえます。

新しい機能的な品物を売る店ではなく、どこかで手放されたものを、必要な人の手に渡す「とび
きり屋」の商売は、現代でいう売り買いとはちょっと違います。

誰かに品を贈与されたら、贈与された側は返礼をする、そのことによってコミュニケーションが
成立する。つまり「とびきり屋」の存在は、当事者同士が直接物品をやりとりする代わりに、真之
介、ゆずを通して、ものをやりとりしている。間接的コミュニケーションが成立する場ともいえるの
ではないでしょうか。

ゆずはものの見立ての才覚にあふれたひとですが、それはひとを見立てるのにも同じことがい
えます。結局はものを売り買いしているように見えて、ものを通してそれを生みだしたひとを見立
てているのでしょう。

コメント
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< August 2019 >>

東条英機 歴史の証言

エミール・ジェンキンス作 「アンティーク鑑定士は見やぶる」

山本兼一作 「千両花嫁」

浅倉卓弥作 「君の名残を」

北森鴻作 「狐罠」

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM